「JEARA公式 art photo展 in 2016」受賞者発表
6月16日から6日間にわたり開催された「JEARA公式 art photo展 in 2016」は、ご来場の方々から多数のご好評をいただき、終了致しました。
ご来場いただいた皆様には、心より感謝申し上げます。
今年は、準1級以上を取得したフォトグラファー44名及び、プラクティカルフォト認定講座監修者・講師の作品が出展され、監修者・講師の作品を除く作品の中から、下記の賞が選ばれました。
「 ベストフォトグラファー賞 」
(プラクティカルフォト認定講座 監修者・プロカメラマン 宮木和佳子により選定 1名)
「 芸術奨励賞 」
(JEARA芸術教育顧問・現代芸術作家 薄久保香により選定 2名)
※芸術賞審査の結果、今回は「芸術賞」を改め、「芸術奨励賞」を2名選定いたしました。
「 オーディエンス賞 」
(ご来場者投票により選定 – 最優秀賞・優秀賞・奨励賞・4位・5位)
選定者紹介
宮木和佳子/JEARA プラクティカルフォト認定講座監修者
日本大学芸術学部 写真学科卒業。TV、雑誌、広告、ファッション、写真集、映画等、様々なジャンルで16年間活躍し続ける現役女性プロカメラマン。「金丸茂嶺賞」受賞や「日韓若手カメラマンON&OFF」にて若手カメラマン厳選50人に選ばれるなど若手時代から頭角を現す。2011年からは、カメラマンとして勢力的に撮影する傍ら、指導にも力を入れる。実践で使えるテクニックを女性目線で分かりやすく指導する力に評価が高い。
薄久保香 / JEARA 芸術教育顧問東京藝術大学大学院 博士号取得
東京、ベルリン、シカゴ、ソウル等での展示活動他、Diorとの特別企画作品を実現させるなど、海外からも注目を集める現代美術作家。アーティスト活動の傍ら、様々な大学で講師を務め、JEARAのデッサン講座の監修を務める等、アート教育にも力を入れる。
「JEARA公式art photo展 in 2016」総評
– 宮木 和佳子 –
今回は、みなさんがこれまで課題などで取り組んできた「全くの自由」なテーマ選びから、「feel」というテーマを念頭に置いての制作でした。
1点の写真に集中して個を閉じ込め一気に開放する、そんな写真的で個性的な作品が多くみられました。
来場者の方もいろんなfeelを感じられたかと思います。また次回の展示が楽しみになりました。
今回のテーマ
「feel」をどのように読み解くか。
テーマとしては、自由度が高く解釈をいろいろと出来るテーマでしたが自分の中でしっかりと意味付けできましたか?
普段の撮影スタイルから、「feel」というテーマに向き合うことで、もう1段階自分の世界観を広げてもらえれば、と思いましたが、難しかった人も多かったようです。
人に展示をして見せるものであれば、その製作期間が長ければ長いほうがよりクオリティや目指す場所を高くすることができます。
もちろん出すことだけでも大きな経験になりますが、feelというテーマを深く読み解き、自分の中での「feel」に落とし込む、自分だけで自由に撮影し展示する場ではないからこそ、取り組む姿勢から大きく変化させることも必要です。
撮影を掘り下げて考えていくと、「どれだけ変化できるか」が大きな鍵となってきます。
まだみなさんは写真を始めたばかりです。大きな可能性や吸収をもとめて「変化」を怖がらないでください。
時に苦しいこともありますが、それすらも糧となるはずです。
新しい自分、本当の意味での私らしい写真というのは必ずその先にあります。
自分を信じて、感じて、時に変化を受け入れながら、作家活動を続けていってください。
ベストフォトグラファー賞
『 Tokyo 』
photo by NAICHI LIU
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
選評
― 宮木 和佳子 ―
今回は、共通テーマだった「feel」ということをどれだけ写真で表現できたか、また写真を見る第三者をどれだけ巻き込めたか、という点において選出いたしました。
最初に見た瞬間、じっくり見た後、会場を出た後、全ての瞬間において様々なインパクトがあり、記憶にしっかりと残る作品だったと思います。
どのタイミングでもしっかりと印象に残る写真というのは、構図、技法、明度表現全てにおいて、製作者の意図が整理され、過不足なく計算され尽くした写真だからでもあります。
さらに、描写の部分では、ブレを効果的に出すことによりよく見てみたいと思わせる、といった「程よく第三者を裏切る」仕掛けが絶妙なバランスで組み込まれています。
同じ写真を見る短い間に、印象を様々に変化さることに成功したという点が、オーディエンス賞1位にもつながったのではないでしょうか。
突発的に「ココ!」と感じる衝動と、それを十二分に写真に写し込める冷静さの両方のバランスがよくとれていました。
作品としての写真、自己表現としての写真は、「被写体がしっかり写っていること」だけが全てではありません。
むしろ何もピントが合っていなくても、被写体が最終的に何か、ということが伝わらなくても、その根底にある自分のイメージやテーマ、表現したいことが写真に出ていたらそれでいいのです。
逆に、しっかり被写体が写っていても、そこから感じられるものがないのであれば、「表現」としては物足りないですね。
たった1枚で、何が伝えられるか。
NAICHI LIUさんの写真はそれを見事に表していたと思います。
芸術奨励賞
『 Large pillar-supported building 』
photo by Aya Sato
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
選評
― 薄久保 香 ―
Aya Satoさんの作品に登場する組柱は、暗示的なオブジェのような印象を受けます。実在するものを冷静に記録しているようでありながら、作者の主観により選び出された視点や色調により、作品の中には、ハイブリッドなリアリティが生成されています。
4点を結合させた試みは、一点一点の写真が持つ構図の完成度とは異なり、挑戦段階という印象をうけました。今後も作品を構成したり展示をする際、是非コンポジションという観点からも研究を続けてみてください。
芸術奨励賞
『 くもの糸 』
photo by 小林幸子
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
選評
― 薄久保 香 ―
小林幸子さんの「くもの糸」は、写真が得意とする即時性と、作者の視点が強く交差する作品です。
構図はシンプルですが、要素を絞ったことにより、作品の持つ主題が強く表出されています。鮮やかな色彩が、モチーフを通して死生観を問うようにも感じられます。周囲の環境の中に眠る、見過ごしてしまうような静か存在を丁寧に掬い上げた作品だと感じました。
芸術奨励賞選出に於いて ― 薄久保 香 ―
今回は「実在を巡る視点」を手がかりに作品を選出させて頂きました。
写真は大切な瞬間や即時性を記録することに優れている一方、無機物を有機的に変容させたり、重厚かつ男性的なものから精緻な女らしさを見出すことも可能です。そして写真は、論理的であれ感覚的であれ、作者の「視点」が強く反映される表現媒体です。別の言い方をすると被写体は撮られることではじめて写真という現実の中に意味を与えられます。そこには作者の「こうあって欲しい」、「これは~な筈」という意図や観念性が意識、無意識に関わらず強く影響を及ぼします。対象と視点という関係性は、あらゆる場所に「美」を出現させます。
オーディエンス賞
最優秀賞
「 Tokyo 」
photo by NAICHI LIU
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
優秀賞
「 雨音 」
photo by 土井 幸子
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
奨励賞
「 三日月と蒼い追憶 」
photo by Yuriko Shigetoshi
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
4位
「 Your fellow 」
photo by 佐藤 祐民子
1級資格取得者・Photographer’s Labメンバー
5位
「 躍 動 」
photo by 野口 清史
1級資格取得者
5位
「 雫の奏 」
photo by MO.NAKA
1級資格取得者
フォトグラファー達が学んだ「プラクティカルフォト」とは?